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はりま風土記紀行

古の播磨を訪ねて~小野市編 その4

 古の播磨を訪ねて~小野市編 その4
極楽山浄土寺

極楽山浄土寺

 

12月初旬の晴れた日に小野市浄谷町(きよたにちょう)の国宝「浄土寺」を訪ねました。幸い、ご住職にお会いすることができ、色々とお話を伺うことができました。 

 

浄土寺の浄土堂は、俊乗房重源(ちょうげん)により、建久8年(1197)に建立されました。このお堂は、内側の柱間約6mの大柱4本と、外側の正面・側面ともに、やはり柱間が約6mで、一辺に4本・合計12本の柱、総計16本の柱で支えられていて、階を持たない簡素な平面構造になっています。また、床以外の柱・組み物等全ての木は朱塗りになっていて、天井を張らず、梁(はり)や貫(ぬき)の豪快な骨組みをそのまま見せる大仏様(だいぶつよう)建築の代表といわれています。屋根は四角錘の宝形造(ほうぎょうづくり)で、本瓦葺、そして、ほとんど反りが無く勾配は直線的です。昭和27年3月29日に国宝に指定されました。

 

次にご本尊の阿弥陀三尊立像ですが、ご住職のお話によると、寺に伝わる「浄土寺縁起」には「一丈六尺金堂の阿弥陀如来と八尺の観音・勢至を各一体安置し、仏師快慶によって造られ、建久八年(1197)に落慶法要を行った」と記されているそうです。重源と快慶とは仏教上の師弟関係にあったため、師の重源の依頼により快慶がこの地でこの3体の仏像を彫ったもので、こちらは昭和39年5月26日に国宝に指定されています。

 

ところで、この浄土堂は境内の西の端、いわゆる極楽浄土の位置する側に建てられているので、阿弥陀三尊像は東向きに立つ形になっています。晴れた日には、西陽が背面の蔀戸(しとみど)より差し込み、お堂の中が美しい朱色に染まった中に、阿弥陀三尊像が浮かび上がるという、まさに西方浄土の世界を再現した造りとなっています。

 

境内を拝見し終わり、帰る頃になって「ともかくもあなた任せの年の暮」の一句が頭をよぎりました。これは、小林一茶の『おらが春』の巻尾に据えられた句です。「あなた」とは「阿弥陀仏」のことで「色々なことのあったこの一年だが、とにもかくにも阿弥陀さまのお慈悲におすがりする年の暮であることよ」という心情を詠んだ句で、まるで、筆者の気持ちそのものを表したような句と感じ、再度浄土堂の阿弥陀さまを拝んで、浄土寺をあとにしました。